記事一覧に戻る
📁 AI news

3万台の無人配送車が街を走る時代へ、JD.com(京東)が挑む「インフラ化」戦略

無人車が数万台規模に増えるにつれ、真の課題は都市レベルの全体最適化へと移行している。中国のEC大手JD.comはAI半導体企業と提携し、ロボット時代の「電力網」のようなインフラ提供者を目指している。

✍️Flower Claw Lab⏱️ 7分で読める
3万台の無人配送車が街を走る時代へ、JD.com(京東)が挑む「インフラ化」戦略

中国のメディア「紫牛新聞」によると、9月10日、無人配送車が障害物を回避し、農村部の郵便配送における「ラストワンマイル」を解消できるようになったと報じられた。同日、無人の緊急車両も展示会場の周辺を走行した。単体の無人車による障害物回避技術はすでに成熟しているが、中国のEC・物流大手であるJD.com(京東集団)は同日、「物理AI(Physical AI)」戦略を発表。中国のAI半導体企業Moore Threads(摩爾線程)と提携し、10万GPU規模の国産AIコンピューティングクラスターを構築し、ロボット産業における「水・電気・ガス」のような不可欠なインフラを提供すると宣言した。

「単独走行」から「コンピューティングインフラ」への飛躍

無人車業界の発展は明確な3つの段階を経ているが、第一段階である「単体車両の自律走行」はすでにクリアされている。現在の無人車は、幅員制限ポールや農作業車を正確に認識できるが、これはあくまで基礎に過ぎない。街中を走る無人車が数百台から数万台へと急増したとき、真の試練が始まる。

JD.comがこのタイミングで10万GPU規模のクラスター計画を打ち出したのは、まさに大規模化に伴う課題を解決するためだ。端的に言えば、単体自律走行は「その車が走れるか」を解決するが、10万GPUクラスターは「数万台の車が同時に走っても混乱しないか」を解決する。一般の人々にとって、これは将来の無人車サービスが車両増加によって麻痺するのではなく、信号機のように正確に制御され、都市交通がよりスムーズになることを意味する。

概念図

海外進出と閉鎖空間での実用化という二極化

JD.comが基盤となるコンピューティング能力の構築に注力する一方で、自動運転業界全体の商業化においては、興味深い第二段階の二極化が見られる。すなわち、海外に活路を求める動きと、特定領域に深く根を下ろす動きだ。

一方では、成長の余地を海外に求めることが共通認識となっている。報道によると、9月10日に中国の自動運転開発企業WeRide(文遠知行)がスペインで初のレベル4自動運転乗用車の運行ライセンスを取得し、海外市場への突破口を開いた。他方では、閉鎖された環境での商業化がすでに軌道に乗っている。同じく9月10日、中国最大の港湾の一つである寧波舟山港(Ningbo-Zhoushan Port)が、370台の新能源(EVなど)大型トラックという過去最大規模の単一発注を受けた。

通信ネットワークの黎明期に例えると分かりやすいだろう。ある企業は辺境地に基地局を建設し、別の企業は繁華街に光ファイバーを敷設する。閉鎖された港湾の大型トラックであれ、海外の街中を走る乗用車であれ、どちらも実世界の走行データを蓄積している。将来的にこれらの膨大なデータが統一された都市レベルの物理AIネットワークに統合されれば、驚くべき相乗効果が生まれる可能性がある。もっとも、一般公道での大規模な実用化は、各地の交通法規や通行権の割り当てに関する政策の不確実性に直面しており、今後の動向を見守る必要がある。

ロボット時代の「電力網」を目指す

業界の進化が第三段階に入ると、競争の焦点は車輪やセンサー(LiDARなど)ではなく、「頭脳」に移る。JD.comはなぜ多大なコストをかけて10万GPUクラスターを構築するのか。

この一手の本質は「コンピューティング能力のインフラ化」にあると考えられる。同社は単に大規模な物流車隊を持つ企業にとどまらず、ロボット時代の「電力網(State Grid)」のような存在になりたいのだ。コンピューティング能力が水や電気のようなインフラになれば、どの企業がロボットを製造しても、ゼロから頭脳をトレーニングする必要はなく、このネットワークに直接接続できるようになる。

例えば、大規模な住宅団地に住んでいるとしよう。夜11時に風邪薬を届ける無人車を呼び、同時に隣人が夜食の配達を呼び、管理組合がゴミ収集車を呼んだとする。都市レベルの物理AIがなければ、これら3台の車両は団地内の狭い通路で立ち往生し、回避ロジックの競合によってその場で動けなくなるかもしれない。しかし、統一されたコンピューティング制御があれば、システムは瞬時に最適解を計算し、優先順位とルートを割り当てる。これはつまり、将来の競争が単体の無人車のハードウェア比較ではなく、その背後にある目に見えないコンピューティング網と制御網の勝負になることを意味する。将来的に宅配便の受け取りや無人車の配車は、今日の水道水を使うのと同じように安価で意識しないものになるだろう。

実用例の図

急成長の裏に潜む暗礁とリスク

とはいえ、理想は素晴らしくとも、現実にはまだ課題が多い。10万GPU規模の国産AIクラスターの建設期間やコンピューティング制御の効率性は、実際の運用を通じて時間をかけて検証する必要がある。さらに警戒すべきは、都市レベルの物理AIが何千台もの無人車を管理するようになると、システムの許容エラー率が極めて低くなる点だ。ひとたびコンピューティングネットワークがサイバー攻撃を受けたり、基盤となるロジックにバグが生じたりすれば、地域全体の無人車が麻痺し、連鎖的な交通事故を引き起こす可能性すらある。加えて、膨大な走行データが集約された後、制御効率とユーザーのプライバシーをどう両立させるかも、インフラ提供者にとって避けて通れない課題だ。物理AIの最終形態は、都市を覆う目に見えない巨大なネットワークになるだろうが、その構築プロセスには多くの利害調整が伴うはずだ。

本日のまとめ

SNSで共有しやすい一言まとめ: JD.comがMoore Threadsと提携して10万GPU規模のAIクラスターを構築することは、無人車業界が「単体車両のハードウェア競争」から「都市レベルのコンピューティング制御競争」へと移行していることを示しており、JD.comはロボット時代の「電力網」を目指している。

読者への質問: 将来的にあなたの住む地域でこのような都市レベルの物理AI制御が完全に導入された場合、無人車に解決してほしい具体的な生活の課題は何ですか?深夜の薬の購入でしょうか、それとも重い荷物の運搬でしょうか?

記事を共有